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映像制作において被写界を最も広範囲に捉えるショットサイズで、特定の被写体がある場合は被写体(人物)を広大な環境・風景の中に極めて小さく収める構図です。

Extreme Long Shot / ELSは、カメラと被写体の距離が非常に遠く、人物が画面の中で「点」や「シルエット」程度にしか見えない状態。主役は「人間」ではなく「空間・環境・世界」そのものです。

日本の映像業界では、一部の人が「大ロング」とも呼びます。



ショットサイズの序列における位置づけ


映像のショットサイズは一般的に以下のように分類されます(広→狭の順):


ELS(エクストリームロングショット)
LS(ロングショット)
MLS(ミディアムロングショット)
MS(ミディアムショット)
MCU(ミディアムクロースアップ)
CU(クロースアップ)
ECU(エクストリームクロースアップ)

ELSはこのスケールの最も遠い端に位置します。



ELSの主な目的・機能


① 場所・世界観の提示(Establishing Shot) 

物語の舞台となる場所を視聴者に一気に把握させる。「ここはどこか」を説明する役割。砂漠、都市、宇宙、山岳地帯など。


② 孤独・孤立・無力感の表現 

広大な自然の中に小さな人物を置くことで、人間の矮小さ、孤独、絶望感を視覚的に表現する。


③ スケール感の強調 

戦場、大群衆、巨大建造物などのスケールを伝えるのに不可欠。


④ 叙情性・詩的表現 

風景そのものを「語り手」にし、感情・テーマを間接的に伝える。


⑤ 客観性・俯瞰的視点 

出来事を神の視点や傍観者の視点で見せ、感情移入を抑制する距離感を生む。



代表的な映画での使用例


アラビアのロレンス(1962)

砂漠の地平線にロレンスが現れるシーン

砂漠の広大さと孤独の強調


2001年宇宙の旅(1968)

宇宙空間の宇宙船

宇宙の無限性、人間の無力さ


シェーン(1953)

山脈を背景に去っていくシェーン

西部の雄大さと別離の孤独感


スター・ウォーズシリーズ

惑星全体・宇宙艦隊の俯瞰

SF世界のスケール提示


ミッドサマー(2019)

スウェーデンの広大な草原

不穏な開放感と逃げ場のなさ

映像制作の現場から


技術的な特徴

  • レンズ:広角レンズ〜標準レンズが多用される(望遠でELSを撮ると圧縮効果で別の質感になる)

  • ドローン・ヘリ撮影との親和性が高い

  • アスペクト比の広いシネスコープ(2.39:1)フォーマットと特に相性が良い

  • 人物の表情・感情は読み取れない → 逆に言えば個人ではなく「存在」として見せる


ELSとエスタブリッシングショットの違い


よく混同されますが:

  • エスタブリッシングショット:「場面の冒頭で場所を提示する」という機能・用途の名称

  • ELS:カメラと被写体の距離・サイズの名称

ELSがエスタブリッシングショットとして使われることは多いものですが、エスタブリッシングショットが必ずELSである必要はありません(LSやMSでも場所提示は可能)。


ELSは単なる「遠くから撮った映像」ではなく、空間・自然・世界を主語にして人間を相対化する、極めて意図的な映像言語です。監督がこのショットを選ぶとき、そこには必ず「人間よりも大きな何か」を語ろうとする意図があります。

執筆者・神野富三

名古屋の映像制作会社・株式会社SynApps代表取締役プロデューサー

シナリオ・演出・編集まで一貫して手がける映像プロデューサー・ディレクターとして40年にわたり映像制作に携わりながら

​ビジネス映像制作のノウハウを伝承する「名古屋映像設計研究所」を主宰

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