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キープ

スケジュールを押さえておくこと。あるいは撮影、録音したテイクの中で、使うかも知れない(けれど、たぶん使わない)テイクのこと、またはその保存する行為を指します。

キープを解説するイメージ(監修・神野富三)

1. スケジュールの仮押さえ


撮影場所、機材、出演者、スタッフなどのスケジュールを仮に押さえることを指します。


具体的な例

「このスタジオ、来週の火曜と水曜、キープできますか?」
「〇〇さん(俳優)のスケジュール、来月1週間キープしておいてください。」


意味
この時点ではまだ仕事が確定しているわけではないが、他の仕事が入らないように押さえておく、という意味合いが強いです。最終的に確定した場合、キープしていたスケジュールが本契約となりますが、もしキャンセルになった場合は「バラシ」という言葉が使われます。



2. 撮影・録音したテイクの保存


撮影現場やナレーション録音で、完全にOKではないものの、念のため保存しておくテイクを指します。


具体的な例

「このテイクは完璧じゃないけど、もしかしたら使えるかもしれないからキープしておこう。」
後で編集、MAする際に、万が一OKテイクが使えなかった場合や、別の表現が必要になった場合に備えて残しておく、というニュアンスです。

映像制作会社としての視点


映像制作における「スケジュール・キープ」の矜持


制作進行PMの大きな仕事は、スタッフの予定というバラバラなピースを組み合わせてパズルを完成させることですが、そのピースは「人の時間」という替えのきかない財産です。

特に、出演者など「代えがきかない相手」の都合を優先するあまり、現場を支えるスタッフ側のスケジュールを過剰に、かつ長期間拘束してしまう傾向には注意が必要です。


1. 「スタッフのキープ」は無形のコストである


出演者や著名なクリエイターは、相手の指定する日程で「決め打ち」になるのが常です。その調整を成立させるために、制作進行はスタッフ側に対し「この期間のどこか」という幅を持たせたキープを依頼しがちです。


拘束の重み

スタッフにとって「キープされている」状態は、他の案件(=収入の機会)を断り続けている状態です。


「念のため」の怖さ 

制作側が「念のため、予備日もすべて押さえておこう」と安易に考える一日は、スタッフにとっては貴重な一日です。



2. 確定度の進捗を「共有」する責任


スケジュール管理において最も避けるべきは、「状況が動いているのに、スタッフを放置すること」です。


こまめなアップデート

出演者の調整状況や、ロケ地の決定具合など、「今どのくらいの日程が確定に近づいているか」を随時スタッフに共有すべきです。


部分的な解放

候補日が3日あり、そのうち1日が候補から外れたのなら、確定を待たずに即座にその1日を「バラす(解放する)」のが、プロの制作進行としてのマナーです。



3. 「信頼のキャッチボール」を止めない


立場上、無理を聞いてもらいやすいスタッフに対してこそ、丁寧なコミュニケーションが求められます。


キープ解除は最優先事項

スケジュールが不要になった際の「バラシ」の連絡は、何よりも優先して行うべき業務です。


誠実な姿勢が現場を救う

「いつもギリギリまで縛られる現場」と「状況を逐一共有してくれる現場」では、スタッフの士気に雲泥の差が出ます。



「立場が強い相手」に予定を合わせるのは業務上のミッションですが、その裏で「スタッフを縛っておくこと」に慣れてはいけません。

スケジュール調整の本質は、相手の時間を尊重し、不確実な時間を1分でも短くすることにあります。

スタッフのキープ期間を適切に管理し、不要になれば即座に解放する。その小さな積み重ねが、結果として「この進行の現場なら、また無理を聞こう」と思ってもらえる、強固な制作体制に繋がります。

執筆者・神野富三

名古屋の映像制作会社・株式会社SynApps代表取締役プロデューサー

シナリオ・演出・編集まで一貫して手がける映像プロデューサー・ディレクターとして40年にわたり映像制作に携わる

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