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キネコとは

テレビ映像やビデオ映像を映画フィルムに記録すること、またはそのための装置・技術を指す映像業界の用語です。

キネコとはを説明する画像

テレビ放送の黎明期に利用された、テレビ映像をフィルムに変換する装置「キネスコープ・レコーダ」に由来する用語です。



テレビ映像をフィルムとして記録する


初期のテレビ放送では、現在のように番組を簡単に録画できる装置がありませんでした。そのため放送されたテレビ映像を保存したり、別の地域で放送したりする目的で、ブラウン管に映し出された映像をフィルムカメラで撮影する方法が使われました。

原理だけを見れば「テレビ画面をカメラで撮影する」ことになりますが、実際にはそれほど単純ではありません。

テレビ映像と映画フィルムでは、フレームレートや走査方式、露光のタイミングなどが異なります。ブラウン管の走査とフィルムカメラのシャッターが合わなければ、画面に帯が出たり(フリッカー)、明るさにむらが生じたりします。このため専用の装置を使い、テレビ映像とフィルム撮影を同期させながら記録しました。

こうしてテレビ映像を映画フィルムへ記録する装置や工程が、キネコ、あるいはキネレコと呼ばれました。



テレシネとは反対方向


キネコと対になるものとして理解しやすいのがテレシネです。

テレシネは、

映画フィルム → テレビ・ビデオ映像

への変換です。

これに対してキネコは、

テレビ・ビデオ映像 → 映画フィルム

への変換です。

ただし、キネコを「逆テレシネ」と呼ぶわけではありません。「逆テレシネ」は通常、24コマ系の映像をNTSC映像へ変換する際に行われた3:2プルダウンなどを解除し、元のフレーム構造へ戻す処理を指します。キネコとは別の技術です。



ビデオの時代になってもキネコは必要だった


キネコというと、VTRが登場する以前のテレビ放送を保存するための古い技術と思われがちです。

しかし、ビデオによる映像制作が普及した後にも、キネコは使われていました。

その理由は、映像を制作する環境と、それを上映する環境の変化が同時には進まなかったからです。


1980年代には、撮影から編集までをビデオで行うことができるようになっていました。一方、映像を上映する場所では、必ずしもビデオ再生設備が普及していたわけではありません。

制作では新しいビデオ技術が使われているのに、上映では従来からある16mm映写機の方が確実に利用できる。そんな時代が実際に存在しました。

その場合、ビデオで完成させた映像をキネコによって16mmフィルムに変換し、そのフィルムを上映用の完成媒体とすることがありました。

映像制作の現場から


医学会で使われた16mmフィルム


1980年代頃まで、医学会などでは16mmフィルムによる映像発表が行われていました。

医学分野では、手術手技や医療機器の動作など、静止画だけでは伝えにくい内容を動画で提示する必要があります。そのため映画フィルムは、医学教育や学会発表でも重要な映像媒体でした。


ところが時代はすでにビデオによる撮影・編集が実用的になっていました。ビデオ撮影であれば、学術的に貴重な稀有な術式が急遽行われることになると、すぐさま撮影に駆けつけることができました。しかも、撮影した映像はその場で確認でき、編集や修正もしやすい。制作工程だけを考えれば、フィルムよりはるかに便利でした。


そこで、

ビデオで撮影
→ ビデオで編集
→ 完成した映像をキネコ
→ 16mmフィルムを作成
→ 学会会場の16mm映写機で上映

という、一見すると逆方向に見える制作工程が実際に行われていたのです。


せっかく新しいビデオ技術で作った映像を、最後に古いフィルムへ戻すわけです。

現在から見ると不思議な工程ですが、当時としては合理的でした。16mm映写機は大学や病院、学会施設などに広く普及しており、16mmフィルムを一本持っていけば上映できます。一方、ビデオには複数の方式や規格があり、会場側に対応するVTRやモニターなどの設備がなければ再生できません。

つまり、制作媒体としてはビデオが先にフィルムを追い越したのに、上映媒体としてはフィルムの方が便利な時期が残っていたのです。

キネコは、フィルム技術からビデオ技術へ一気に切り替わったのではなく、新旧の技術が長い期間併存していたことを象徴する技術でもあります。



現在のキネコ


現在では、撮影、編集、複製、伝送、上映のほぼすべてをデジタルデータのまま行えるため、一般的な映像制作でキネコを行う必要はなくなりました。

一方、デジタル映像をレーザーなどによって映画フィルムへ記録するフィルムレコーディング(film recording)やフィルムアウト(film-out)という技術は現在も存在します。映画フィルムでの上映、作品上の表現、長期保存など、特別な目的で利用されます。

ただし、これはブラウン管などに表示したビデオ映像をフィルムへ記録していた時代の「キネコ」とは、装置も目的も大きく異なります。

最終更新日

2026年8月13日 17:13:18

執筆者・神野富三

名古屋の映像制作会社・株式会社SynApps代表取締役プロデューサー

シナリオ・演出・編集まで一貫して手がける映像プロデューサー・ディレクターとして40年にわたり映像制作に携わりながら

​ビジネス映像制作のノウハウを伝承する「名古屋映像設計研究所」を主宰

 執筆者ブログ「映像制作ガイドブック」

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