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マイク

マイクはMicrophoneの略語で、空気中を伝わる音の振動を受け取り、それを電気信号に変換する装置です。

プロ用マイクの定番たちの画像

人の声や楽器の音、周囲の環境音などは、空気圧の細かな変化として空間を伝わっています。マイクロフォンは、その空気圧の変化を薄い膜で受け止め、その振動を電気信号へ変換します。

基本的には、音 → 振動板の動き → 電気信号という変換を行う装置です。

マイクから送り出された電気信号は、ミキサーや録音機、カメラなどで増幅され、現在では多くの場合A/D変換を経てデジタルデータとして記録されます。



マイクロフォンの基本構造


多くのマイクロフォンには、ダイアフラム(振動板)と呼ばれる薄い膜があります。

音がマイクに到達すると、その音圧によってダイアフラムが前後に振動します。

このダイアフラムの動きを、どのような原理で電気信号に変換するかによって、マイクロフォンはいくつかの方式に分けられます。

代表的なのは、

  • ダイナミックマイク

  • コンデンサーマイク

  • リボンマイク

です。さらに現在では、エレクトレットコンデンサーマイクやMEMSマイクなども広く使われています。



ダイナミックマイク


ダイナミックマイクの代表的な構造が、ムービングコイル型です。

ダイアフラムに小さなコイルが取り付けられており、その周囲には永久磁石による磁界があります。

音によってダイアフラムが振動するとコイルも一緒に動き、磁界の中でコイルが動くことによって電磁誘導が起こり、電圧が発生します。

原理だけを見れば、一般的なダイナミックスピーカーを逆方向に動作させたものに近い構造です。

比較的丈夫で、大きな音圧にも耐えやすく、外部電源を必要としないため、ライブステージ、放送、インタビュー、楽器収録などで長年使用されてきました。


Shure SM58/SM57

ダイナミックマイクの代表例として最もよく知られているのが、Shure SM58とSM57です。

SM58はボーカルやスピーチ、SM57は楽器収録を中心に使われてきましたが、実際の現場では用途はさらに広く、世界各地のステージ、放送、録音現場で長年使用されています。


Sennheiser MD 441

もうひとつ、プロの現場で長い歴史を持つダイナミックマイクがSennheiser MD 441です。

1971年に登場したスーパーカーディオイド型のダイナミックマイクで、30Hz~20kHzという広い周波数特性を持ち、コンデンサーマイクに近い音質を目指して開発されました。Sennheiser自身も「ダイナミックでコンデンサーのような音」という開発思想を紹介しています。

独特の細長い外観も特徴で、テレビスタジオ、放送、音楽番組、ボーカル、楽器収録などで長年使われてきました。SM58のような頑丈なステージマイクとは少し性格が異なり、高品位なスタジオ用ダイナミックマイクを代表する存在といえます。



コンデンサーマイク


コンデンサーマイクでは、非常に薄いダイアフラムと固定電極を向かい合わせ、電気的なコンデンサーを構成します。

音によってダイアフラムが動くと、二つの電極の間隔が変化します。

これによって静電容量が変化し、その変化を電気信号として取り出します。

ダイアフラムを非常に軽く作ることができるため、細かな音の変化や高い周波数にも追従しやすく、一般に高感度で広い周波数帯域を持つことが特徴です。

一方で、内部回路を動作させるための電源を必要とします。現在の業務用コンデンサーマイクでは、マイクケーブルを通じて電源を供給する48Vファンタム電源が広く使われています。


Neumann U 87

スタジオ用コンデンサーマイクを代表する存在が、Neumann U 87です。

1960年代末に登場して以来、ボーカル、ナレーション、楽器、放送など非常に幅広い用途で使われ続けています。

Neumann自身もU 87を、世界で最もよく知られ、最も広く使われているスタジオマイクの一つと位置付けています。現在でも後継モデルのU 87 Aiが販売されており、基本設計の考え方は何十年にもわたって受け継がれています。


Sony C-38/C-38A

日本の放送・録音現場を語るうえで、Sony C-38も重要なコンデンサーマイクです。

C-38シリーズは、テレビ局、ラジオ局、録音スタジオなどで長年使用されてきたソニーの業務用コンデンサーマイクで、特に日本では非常に馴染みの深い存在でした。

大きな長方形のグリルと、左右から本体を支えるヨーク状の支持部を持つ独特の外観は、かつてのテレビスタジオや音楽番組の収録風景を象徴する機材のひとつでもあります。

後期のC-38Aでは、放送や音楽収録、ナレーション、楽器収録など幅広い用途に使われました。

Neumann U 87が欧米のスタジオマイクを代表する存在だとすれば、Sony C-38シリーズは、日本の放送・録音文化の中で育った定番コンデンサーマイクといえます。



エレクトレットコンデンサーマイク


コンデンサーマイクの一種に、エレクトレットコンデンサーマイクがあります。

通常のコンデンサーマイクでは、電極に電圧を加えることによって必要な電荷を作ります。

エレクトレット方式では、あらかじめ電荷を保持する性質を持った材料を使用することで、この部分を簡略化できます。

小型化しやすいため、ピンマイク、ワイヤレスマイク、ビデオカメラ内蔵マイクなどに広く利用されてきました。

「エレクトレットだから簡易なマイク」という意味ではなく、放送・映画・テレビ制作で使われる高性能な小型マイクにも、この方式は多数あります。


Sony ECM-50P

日本の放送・映像制作の歴史を考えると、往年のタイピン型マイクとしてSony ECM-50Pは外せない機種のひとつです。

現在のラベリアマイクと比べるとかなり大きく、衣服の胸元にクリップで装着した姿そのものが、かつてのテレビ番組やインタビュー映像を思い起こさせます。

その後、マイクはさらに小型化され、ECM-77シリーズやSanken COS-11などへと発展していきました。

ECM-50Pは、現在の極小ラベリアマイクへ至る途中の時代を象徴する、業務用タイピン型マイクの代表的存在といえます。



リボンマイク


リボンマイクは、磁界の中に非常に薄い金属製のリボンを置き、そのリボン自体を音によって振動させることで電気信号を発生させます。

電磁誘導を利用する点ではダイナミックマイクの仲間ですが、ムービングコイル型とは構造が異なります。非常に軽いリボンが直接音を受けるため、独特の滑らかな音質を持ち、とりわけ放送や音楽録音で長い歴史があります。古いリボンマイクでは、強い風や衝撃によってリボンを損傷する可能性があり、取り扱いには注意が必要でした。


RCA 44-BX

リボンマイクの歴史を代表する機種が、RCA 44-BXです。

1930年代から放送局や録音スタジオで広く使用され、その大きな筐体と独特の形状は、古いラジオ放送やレコーディングスタジオを象徴する存在にもなりました。

Audio Engineering Societyの資料でも、44-B/44-BXはリボンマイク技術史を代表する機種として取り上げられています。


RCA 77-DX

同じく有名なのがRCA 77-DXです。

44系より小型で、指向特性を切り替えられることも特徴でした。

戦後のラジオ・テレビ放送を象徴するマイクのひとつで、アメリカの大統領演説や放送スタジオの写真にも頻繁に登場します。

現在でも「昔の放送用マイク」を表現するとき、この形状をモデルとしたマイクが使われるほど、視覚的にも定着した存在です。



ガンマイク


ガンマイクは変換方式の名称ではありませんが、映画、テレビ、企業映像などの撮影現場では、ガンマイク(ショットガンマイク)が重要な位置を占めています。

現在使われているガンマイクの多くはコンデンサー方式ですが、「ガンマイク」という名称そのものは、細長い干渉管を使って強い指向性を作る構造を表しています。

マイク前方に細長い干渉管(interference tube)があり、側面から入ってきた音を複数のスリットから取り込みます。

横方向から来た音は、それぞれ異なる距離を通ってマイクユニットへ到達するため、位相差が生じます。この位相差を利用して側方からの音を減衰させ、前方から来る音を相対的に強く収音します。


Sennheiser MKH 416

プロの映画・テレビ・映像制作で、ガンマイクの代名詞ともいえる存在がSennheiser MKH 416です。

1975年に登場し、映画、テレビ、報道、ロケーション収録などで半世紀にわたって使われ続けています。Sennheiser自身も2025年に発売50周年を紹介し、現在も業界標準として使用されていることを説明しています。

新しいガンマイクが多数登場している現在でも、MKH 416を指名して使用する録音技師やスタジオは少なくありません。



ピンマイク、タイピンマイク、ラベリアマイク


これもマイクの変換方式を表した名称ではありません。出演者の胸元などに取り付ける小型マイクは、日本では一般にピンマイクまたはタイピンマイクと呼ばれます。英語ではlavalier microphone(ラベリアマイク)と呼ばれます。

「小型で衣服などに装着して使う」という形状・用途による分類です。

現在ではエレクトレットコンデンサー方式が広く使われ、ワイヤレス送信機と組み合わせてテレビ番組、映画、インタビュー、講演、企業映像などで使用されています。

かつてのSony ECM-50Pから、ECM-77シリーズ、Sanken COS-11などへと小型化・高性能化が進みました。



マイクの指向性とは


どの方向から来る音を、どの程度の感度で収音するかを示す性質です。周囲の音を広く自然に収録したい場合は無指向性、話者や楽器など特定の音を中心に収録したい場合は単一指向性、周囲の雑音をできるだけ避けて離れた対象を狙う場合は、より指向性の鋭いマイクを使います。収録したい音と不要な音の位置関係、マイクを置ける場所、音場の広がりなどによって指向性を使い分けます。


たとえばインタビューでは話者以外の音を抑えるため単一指向性を、会場全体の雰囲気を収録する場合には無指向性を、映画やテレビの撮影で画面外から特定の人物の声を狙う場合にはガンマイクを使用するなど、収録目的によって使い分けます。


定番マイクの指向性

Shure SM58:単一指向性

Sony C-38A:単一指向性/無指向性 切替 

Sennheiser MD 441:超単一指向性

Neumann U 87:無指向性/単一指向性/双指向性(8の字)切替 

Sony ECM-50P:無指向性

Sennheiser MKH 416:超単一指向性(ローバー)

映像制作の現場から


プロの現場で長年使われてきた代表的なマイク


マイクロフォンの世界には、数十年前に開発された製品が、現在でも現役で使われている例が数多くあります。代表的なものを挙げると、


Shure SM58
ライブ、ボーカル、スピーチを代表するダイナミックマイク。


Sennheiser MD 441
高品位なスタジオ用ダイナミックマイクの代表格。放送・音楽収録で長く使用されてきました。


Neumann U 87
スタジオ録音、ナレーション、ボーカルを代表する大型コンデンサーマイク。


Sony C-38
日本の放送局、テレビスタジオ、録音スタジオで長年使われてきた大型コンデンサーマイク。日本の放送録音史を象徴する機種のひとつです。


Sony ECM-50
日本のテレビ・放送・映像制作で長く使われた往年のタイピン型マイク。


Sennheiser MKH 416
映画、テレビ、企業映像などのロケーション収録を代表するガンマイク。



なぜマイクロフォンの「定番」は長く続くのか


映像制作機材の多くは、技術革新とともに急速に世代交代します。

ところが、マイクロフォンには50年以上使われ続けているモデルさえあります。

これにはいくつかの理由があります。


アナログ変換器として完成度が高い

マイクロフォンは、音響エネルギーを電気信号へ変換するアナログの変換器です。

ダイナミック型、コンデンサー型、リボン型といった基本原理は、かなり早い時期に確立されています。

もちろん材料や電子回路、製造精度は改良されていますが、優れた設計のマイクについては、何十年も前の段階ですでに実用上非常に高い完成度に達していました。

「新製品だから以前より圧倒的によく録れる」とは限らない世界です。


マイクには固有の「音」がある

マイクは単に音を正確に電気信号へ変換するだけの装置でもありません。

ダイアフラム、筐体、音響回路、指向性、内部回路などによって、それぞれ微妙に異なる音質を持っています。

U 87で録った声、MD 441で録った声、MKH 416で録った声には、それぞれ特徴があります。

その音が長年の放送、映画、音楽作品で使われることで、やがて制作側だけでなく視聴者側にとっても「聞き慣れた音」になります。

そのため、新しいマイクが技術的には優秀であっても、従来の定番機が不要になるとは限りません。


技術者が結果を予測できる

プロの現場では、スペック上の性能以上に、「このマイクを、この距離、この角度に置けば、こういう音になる」という経験が重要です。

録音技師やミキサーは、長年使ってきたマイクの特性を身体的に覚えています。

MKH 416ならどの程度画面外まで離せるか。

MD 441なら声にどの程度近づけるか。

U 87ならどの距離でどの程度の近接効果が出るか。

こうした経験値は、新製品を導入すると一度リセットされます。

プロの現場では、わずかな性能差よりも、結果をあらかじめ予測できることの方が重要な場合があります。


現場全体がそのマイクを知っている

定番マイクには、もうひとつ大きな利点があります。

録音技師だけでなく、スタジオ、レンタル会社、放送局、制作会社、アシスタントなど、多くの人がその機材を知っています。

「416を一本お願いします」

「U 87を立ててください」

「441ありますか」

というだけで、おおよその用途や扱い方まで伝わります。

これは業務機材として非常に大きな価値です。

故障したとしても代替機を見つけやすく、別の地域や海外の現場でも同じモデルを用意できます。

長年使われた機材だからこそ、機材そのものだけでなく、その周囲に運用の標準が形成されているわけです。


壊れなければ使い続けられる

映像機器のように、記録規格の変更によって使用不能になることもほとんどありません。

XLRによるアナログ音声伝送や48Vファンタム電源といった業務用音響の基本的なインターフェースは長期間維持されています。

そのため、数十年前のマイクであっても、適切に整備されていれば現在のデジタルレコーダーやオーディオインターフェースへ接続して使用できます。

RCA 44-BXのような戦前期に設計されたマイクでさえ、現在の録音作品に使うことができます。

最終更新日

2026年10月16日 16:43:45

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