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モンタージュ

複数のショットを意図的な順序で編集・接続し、その組み合わせによって新しい意味や感情、時間・空間の関係を表現する映像編集技法です。単なるカットの連続ではなく、ショット相互の関係から観客に新たな解釈を生み出させることが本質です。

モンタージュを説明している画像

説明をすると、とても抽象的で難解な概念のように聞こえますが、この概念を直感的に理解でき、実践できれば、たぶん映像編集は格段に楽しくなるはずです。



モンタージュの本質


カメラは一つのショットしか撮影できません。しかし、人間はショット同士を連続して見ると、その関係から新しい意味を読み取ります。

例えば、

  • 子どもの笑顔

  • 空になった皿

この2つを続けて見せると、

「お腹いっぱいになって満足している」

と観客は自然に解釈します。

逆に、

  • 空になった皿

  • 子どもの泣き顔

なら、

「食べ物が足りなかった」

という全く別の意味になります。

つまり、意味はショットの中ではなく、ショットとショットの関係から生まれるという考え方がモンタージュです。



モンタージュは「早い編集」ではない

  • テンポ良く切り替える

  • ダイジェスト映像

をモンタージュと呼ぶことがあります。

しかし、これは本来の意味ではありません。

編集速度は関係なく、ショット同士の組み合わせによって新しい意味を作ることがモンタージュです。


現代の映像制作では現在では意味が少し広がり、

  • 時間の経過を短時間で見せる

  • 成長過程をまとめる

  • 作業工程を圧縮して見せる

  • スポーツの名場面を連続して見せる

なども「モンタージュ」と呼ばれることがあります。

ただし、これらも複数のショットを編集して、一つのまとまった意味や印象を伝えるという点では本来の考え方を受け継いでいるとも言えます。

映像制作の現場から


絶滅危惧種としての「モンタージュ」


文法が共有されなくなったという問題


モンタージュは、観る側がある程度の映像文法を共有していることを前提に成立します。異なるショットの対比や象徴的なイメージの連なりから意味を読み取るためには、「映像は編集によって語られるものだ」という前提知識が必要です。しかし現在の視聴環境では、映画や映像の文法に親しむ機会が必ずしも十分に用意されているとは言えません。ショート動画や倍速視聴、ながら見が一般化したことで、編集の意図を読み解く前に次の映像へと移ってしまう体験が増えています。その結果、モンタージュという文法そのものが共有されにくくなり、意味の飛躍が伝わりにくい状況が生まれています。



考える余白が奪われた視聴体験


モンタージュの本質は、観客の頭の中で意味が組み立てられることにあります。複数のショットが連なることで生まれる“第三の意味”は、視聴者が一瞬立ち止まり、無意識にでも解釈する余白があってはじめて成立します。しかし、現在の映像消費の多くはタイムラインを高速で流れる形式に最適化されています。分かりにくいものはすぐにスキップされ、説明的で即座に理解できる映像が好まれる傾向が強まっています。この環境の中では、意味を観客に委ねるモンタージュの設計思想が機能しにくくなっているのが実情です。



プラットフォーム最適化とモンタージュの衝突


現代の映像制作は、配信プラットフォームやSNSのアルゴリズムと無縁ではいられません。多くの場合、視聴維持率や離脱率を意識した結果、映像はより説明的になり、結論を先に提示する構造が選ばれがちになります。こうした設計は、編集によって意味の飛躍を生み出すモンタージュとは相性がよくありません。モンタージュは、あえて説明しすぎないことで観客の理解を促す技法ですが、アルゴリズムは“迷わせない映像”を評価する傾向にあるため、両者の間には構造的な緊張関係が生まれています。



それでもモンタージュは終わらない


モンタージュが危機に瀕していると言われるのは、技法そのものが時代遅れになったからではありません。むしろ、映像を読み解く文法が視聴者側に共有されにくくなり、その前提条件が揺らいでいることが問題なのです。だからこそ、現代の映像制作においては、モンタージュを捨てるのではなく、読み取れなくても成立する一次的な意味と、読み取れた人にはより深い解釈が立ち上がる二次的な意味を同時に設計する必要があります。

最終更新日

2026年8月7日 14:52:56

執筆者・神野富三

名古屋の映像制作会社・株式会社SynApps代表取締役プロデューサー

シナリオ・演出・編集まで一貫して手がける映像プロデューサー・ディレクターとして40年にわたり映像制作に携わりながら

​ビジネス映像制作のノウハウを伝承する「名古屋映像設計研究所」を主宰

 執筆者ブログ「映像制作ガイドブック」

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