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ローリングシャッター現象

イメージセンサーが画面全体を同じ瞬間に記録せず、ラインごとに時間をずらして記録することによって生じる画像の歪みです。 高速で動く被写体や素早いカメラワークでは、直線が斜めに傾く、被写体が曲がる・伸びる、画面全体が波打つといった症状が現れることがあります。

ローリングシャッター現象を説明している画像

1. ローリングシャッター現象が起きる原理


ローリングシャッター方式のイメージセンサーでは、画面を構成する各ラインを上から下へ、あるいは下から上へ順番に露光・読み出します。

そのため、1枚の画像であっても、画面の上部と下部では記録される時刻にわずかな差があります。

通常の撮影ではほとんど問題になりませんが、読み出している間に被写体が高速で移動したり、カメラを素早く動かしたりすると、ラインごとに被写体の位置が変わります。その時間差が一枚の画像として合成されることで、本来とは異なる形に記録されます。



2. ローリングシャッターで生じる代表的な症状


斜めに傾く(スキュー)

走行する電車や自動車などを撮影したり、カメラを高速でパンしたりすると、本来垂直であるはずの柱や建物などが斜めに傾いて写ることがあります。


高速で動く物体が変形する

プロペラ、扇風機、車輪、ゴルフクラブなど高速で移動・回転する物体では、直線が曲がったり、伸び縮みしたり、本来とはまったく異なる形に写ったりすることがあります。


画面が波打つ(ジェリー/ウォブル)

手持ち撮影や車載撮影、ドローン撮影などでカメラに細かな振動が加わると、画面全体がゼリーのように揺れたり、建物などが波打って見えたりすることがあります。


明暗の帯が現れる(バンディング)

LED照明など周期的に明滅する光源では、センサーのラインごとの記録時刻と光源の明滅周期との組み合わせによって、画面に明るい部分と暗い部分が帯状に現れることがあります。これは形状の歪みとは異なりますが、ローリングシャッター方式の時間差によって生じる関連現象です。



3. ローリングシャッターとグローバルシャッター


ローリングシャッターに対して、画面を構成するすべての画素を同じタイミングで露光する方式をグローバルシャッターといいます。

グローバルシャッターでは画面の上部と下部に撮影時刻のずれがないため、ローリングシャッター特有の形状の歪みは原理的に発生しません。

なお、ローリングシャッターは「CMOSセンサーだから起こる現象」という説明をされることがありますが、これは正確ではありません。CMOSセンサーにもグローバルシャッター方式があります。



プロペラの回転やゴルフクラブのスイングで顕著に出る理由


プロペラやゴルフクラブは、ローリングシャッター現象が非常にわかりやすく現れる被写体です。

最大の理由は、その移動速度の速さです。センサーが画面の上から下までを読み出しているわずかな時間にも、プロペラの羽根やクラブのシャフトは大きく移動しています。そのため、上のラインと下のラインではまったく異なる位置にある被写体が記録されます。


さらに、プロペラの羽根やクラブのシャフトは細長く、本来の形状が明確です。そのため、わずかな時間差による位置のずれでも「曲がる」「ねじれる」「途中で形が変わる」といった異常が非常に目立ちます。

また、高速シャッターを使用してモーションブラーが少なくなると、ローリングシャッターによる形状の歪みそのものがくっきり見えることがあります。

映像制作の現場から


現場でできるローリングシャッター対策


ローリングシャッター方式のカメラを使用する限り、現象そのものを完全になくすことはできません。しかし、撮影方法によって発生を抑えたり、目立ちにくくしたりすることはできます。


① 激しい横方向の動きを避ける

高速で横切る被写体では、垂直線の傾きや形状の変形が目立ちやすくなります。可能であれば真正横からではなく、正面寄りや斜め方向から撮影し、画面内を高速で横切る動きを小さくします。


② カメラを激しく動かさない

高速なパンや細かな振動はローリングシャッター現象を目立たせます。三脚やジンバルを使用し、特に細かな振動を抑えることが有効です。


③ 読み出し速度の速い撮影モードを選ぶ

ローリングシャッターの程度は、センサーが1フレームを読み出すのに要する時間に大きく左右されます。高フレームレート撮影など、読み出し時間が短くなる撮影モードでは改善することがあります。

ただし、60pや120pにすれば必ず改善するわけではありません。読み出し速度はカメラや解像度、センサーモードなどによって異なります。


④ シャッタースピードを速くしすぎない

シャッタースピードを速くしても、センサー全体の読み出し時間が短くなるとは限りません。むしろモーションブラーが減ることで、ローリングシャッターによる形状の歪みが鮮明に見えてしまうことがあります。

適度なモーションブラーを残すことで、歪みを視覚的に目立ちにくくできる場合があります。


⑤ 画角や構図で目立たなくする

高速回転するプロペラやクラブのシャフトなど、歪みが目立ちやすい形状を画面いっぱいに見せる構図を避けることも現実的な対策です。被写体全体や周囲の状況を含めることで、歪みに視線が集中することを防げます。


⑥ 編集で補正する

編集ソフトにはローリングシャッターによる歪みを補正する機能があります。パンによる直線の傾きや画面全体の揺れなどでは一定の効果を期待できます。

ただし、高速回転するプロペラのようにラインごとに形状が大きく変化して記録された映像は、後処理で完全に元の形へ復元することは困難です。



撮影前に知っておくことが最大の対策


ローリングシャッター現象は、撮影後に発見しても完全には修復できない場合があります。

特に、プロペラ、工作機械、高速走行する車両、ゴルフなどのスポーツ、激しいパンを伴う撮影では、使用するカメラのローリングシャッター特性を事前に確認しておくことが重要です。


ローリングシャッターは「カメラの故障」ではなく、画面の各部分を異なる時刻に記録するという撮像方式そのものから生じる現象です。この原理を理解しておけば、撮影現場でどのような被写体やカメラワークに注意すべきかを判断しやすくなります。

最終更新日

2026年8月25日 15:09:57

執筆者・神野富三

名古屋の映像制作会社・株式会社SynApps代表取締役プロデューサー

シナリオ・演出・編集まで一貫して手がける映像プロデューサー・ディレクターとして40年にわたり映像制作に携わりながら

​ビジネス映像制作のノウハウを伝承する「名古屋映像設計研究所」を主宰

 執筆者ブログ「映像制作ガイドブック」

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