台詞(セリフ)
映画、ドラマ、CMなどで、登場人物や出演者が発することを前提として 、あらかじめ脚本や台本に書かれた言葉です。
セリフは、単に「人物が話している言葉」ではなく、制作する側が、ある内容をその人物に言わせるために用意した言葉です。
物語の中では、セリフは登場人物自身の言葉として聞こえます。しかし制作の側から見れば、脚本家や演出者が、その人物の立場、性格、感情、状況などを踏まえて書き、その人物に発話させています。
つまりセリフには、
「その人物自身の言葉として成立していること」と、「制作側によって言う内容が決められていること」
という二つの側面があります。
「フィクションとしての自律性」と「メタ(制作)視点での意図」の二重構造をもつのがセリフです。
この点で、自然に生じた会話や、本人が自分の言葉で答えるインタビューとは本質的に異なります。
また、セリフは情報を伝えるだけのものではありません。
人物の性格や立場を示す、相手との関係を表す、感情を伝える、場面を変化させる、物語を進めるなど、作品の中でさまざまな役割を持ちます。
優れたセリフは、制作側が書いた言葉であっても、観客には「この人物ならこう言うだろう」と感じられます。反対に、制作側が伝えたい情報をそのまま人物に言わせると、人物の言葉ではなく、説明文を読ませているように聞こえることがあります。
映像制作の現場から
企業映像では、「インタビュー」として撮影されているものの、実際には出演者が用意されたセリフを話しているケースが少なくありません。
本来のインタビューでは、質問に対して本人が自分の経験や考えを自分の言葉で話します。質問する側は、必要な内容が出てくるように問い方を工夫しますが、答えそのものを完全には決めません。
一方、話す内容を一字一句決めてしまえば、出演者は「答えている」のではなく、「与えられた言葉を話している」ことになります。
この違いは、映像の印象にも表れます。
企業映像でよく見られる「インタビューなのに広告臭く感じる」原因の一つが、ここにあります。
もちろん、インタビュー内容を事前に確認したり、話してほしい要点を伝えたりすること自体に問題があるわけではありません。撮影時間が限られる企業映像では、ある程度の準備が必要です。
本人の言葉を引き出しているのか、それとも制作側の言葉を本人に言わせているのか。
前者はインタビューであり、後者は演出されたセリフです。
企業映像では、この境界を意識するだけでも、出演者の発話をより自然で信頼感のあるものにすることができます。
最終更新日
2026年10月16日 16:43:45
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