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クロスカッティングとは

クロスカッティング(cross-cutting)とは、異なる場所や人物のもとで進行している複数の出来事を、交互に切り替えながら描く編集技法です。

クロスカッティングのイメージ

典型的なのは、離れた場所で同時に進行している二つの出来事を交互に見せる表現です。

例えば、逃走する犯人と、それを追う警察を、


犯人 → 警察 → 犯人 → 警察……


と交互に見せる。

観客は、実際には別々に撮影された映像であっても、編集によって「二つの出来事が同時に進んでいる」「警察が犯人に近づいている」と理解します。

単に二つの場所を紹介するのではなく、編集によってそれらの時間的・物語的な関係を作り出すことが、クロスカッティングの大きな特徴です。

映像制作の現場から


同時進行する出来事を描く


クロスカッティングの代表的な用途が、同時進行(parallel action)の表現です。

例えば、一方では時限爆弾の残り時間が減っている。別の場所では、それを止めようとする人物が現場へ向かっている。


爆弾

現場へ急ぐ人物

残り時間がさらに減った爆弾

さらに近づいた人物


と交互に編集すれば、二つの出来事の距離だけでなく、残された時間まで観客に意識させることができます。

そのためクロスカッティングは、サスペンスやアクションなどで緊張感を高める手法として多用されてきました。



必ずしも「追跡」である必要はない


クロスカッティングによって結びつけられる二つの出来事は、直接対決するものとは限りません。

例えば、一方では華やかなパーティーが行われ、別の場所では災害への対応が続いている。この二つを交互に見せれば、物語上の対比が生まれます。

ある人物が幸福な時間を過ごしている一方で、その人物の知らない場所では重大な事件が進行している、といった構成も可能です。観客だけが双方の状況を知っていることによって、登場人物にはない情報や予感を持たせることもできます。

クロスカッティングは、単なる場面転換ではなく、離れて存在する映像を編集によって関係づける技法でもあります。



編集によって「同時」を作る


映像制作で注意したいのは、クロスカッティングによって示される同時性が、撮影時の同時性とは無関係だということです。

二つの場面は、別の日、別の場所で撮影されていてもかまいません。

編集によって交互に配置されることで、観客は二つの出来事を同時進行として受け取ります。

つまりクロスカッティングでは、編集が単に不要部分を取り除いたり場面をつないだりしているのではなく、物語上の時間と出来事の関係そのものを作っています。



カットバックとの違い


クロスカッティングと混同されやすい言葉に、カットバック(cut back)があります。

例えば、


A → B → A → B……


という映像だけを見れば、どちらの言葉でも説明できる場合があります。

しかし、着目している点が異なります。

カットバックは、AからBへ切り替えたあと、再びAへ「戻る」ことを表します。クロスカッティングは、AとBという複数の出来事を交互に配置し、その同時進行や対比、相互関係を観客に意識させることを目的とします。

そのため、


話し手 → 聞き手の表情 → 話し手

という編集はカットバックですが、それだけでクロスカッティングとはいいません。

一方、


逃走する犯人 → 追跡する警察 → 犯人 → 警察……


と二つの行動を並行して展開すれば、クロスカッティングになります。

両者は編集結果の形が似ているため混同されますが、カットバックが画面の「往復」を表すのに対し、クロスカッティングは複数の出来事を交差させて物語を構成する技法と考えると、その違いが明確になります。

最終更新日

2026年8月17日 2:27:18

執筆者・神野富三

名古屋の映像制作会社・株式会社SynApps代表取締役プロデューサー

シナリオ・演出・編集まで一貫して手がける映像プロデューサー・ディレクターとして40年にわたり映像制作に携わりながら

​ビジネス映像制作のノウハウを伝承する「名古屋映像設計研究所」を主宰

 執筆者ブログ「映像制作ガイドブック」

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