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移動車

カメラとカメラマンを乗せて撮影操作ができるだけの安定性と堅牢さをもつタイヤドリー、ないしはレールドリーの台車部分のことです。

レールドリー撮影の様子

移動車の基本的な役割


移動車は、移動ショットを撮影する時に、滑らかなカメラ移動を実現するための「撮影装置の一部」として設計されています。走行時の振動やブレを抑え、カメラとカメラマン(+フォーカスプラー※)を載せた状態でも安定した挙動を維持することが求められます。


※フォーカスプラーは、被写体までの距離変化に応じてピントを正確に合わせ続ける役割を担います。ドリーショットのようにカメラ自体が移動する場合は、距離が連続的に変化するため、動きに合わせて滑らかにフォーカス送りを行う高度な技術が求められます。そのため、カメラマンのすぐ近く、あるいは移動車に同乗して操作することが多くなります。



構造と装備


移動車には、座席や足場、機材固定用マウントなどが備えられることが多く、操作性と安全性の両立が図られています。また、重量配分や重心設計も重要で、加減速時の揺れや不意の傾きを防ぐ工夫がなされています。



タイヤドリーとレールドリーの違い


タイヤドリーの移動車は床面を直接走行するため、設置の自由度が高く、迅速なセッティングが可能です。一方で、路面の影響を受けやすく、わずかな凹凸が映像に現れる可能性があります。

これに対してレールドリーの移動車は、専用レール上を走行することで、高い直線性と再現性を確保できます。精密なカメラワークが求められる場面では、レールの使用が前提となることも多くあります。



レール敷設という精密作業


レールの敷設は、時間と労力を要するうえ、非常に精緻な作業です。わずかな高低差や継ぎ目のズレが、そのまま画面上の揺れとして現れるため、水平出しや支持の調整を繰り返しながら設営が行われます。

この工程は一見地味ですが、映像の滑らかさを決定づける重要な基盤となります。



特機」という専門領域


これらのドリー機材およびその運用は、「特機」と呼ばれる専門分野に属します。特機は、機材の貸し出しだけでなく、現場での設営・調整・操作までを担う専門職・専門会社によって支えられています。



移動車操作に求められる技能


移動車の操作は、単純な押し引きではありません。動き出しと停止は、イーズイン・イーズアウトのように滑らかに制御する必要があります。急激な加減速は違和感として画面に現れるため、速度変化を連続的に設計する感覚が求められます。

一定のリズムで力を伝え、振動や進行方向のブレを抑えることも重要であり、コツの取得と熟練、そして状況に応じた判断力が必要とされます。



カメラマンとの連携と察知力


移動車の操作は、カメラマンとの連携によって成立します。フレーミングやフォーカス操作と密接に関係するため、単に指示を待つのではなく、カメラマンの動きや意図を察知し、速度や停止位置を微調整する能力が重要です。

現場では、合図やカウントによるタイミング共有に加え、呼吸を合わせるような感覚的な連携も求められます。

映像制作の現場から


「移動車」という言い方は今でも通じますが、近年はあまり一般的な呼称ではなくなっています。現在は、より具体的な機材名で呼ぶ傾向が強く、たとえば「ドリー」「ドリー台」「ドリー本体」あるいは単に「台車」などと呼ばれるます。特に若いスタッフや、映像制作の裾野が広がった以降の世代では、「移動車」という言葉をあまり使いません。


「移動車」という呼称は、フィルム撮影時代からの現場用語で、機材構成を包括的に捉えた言い回しです。そのため、特機の現場やベテランのスタッフの間では今でも使われることがありますが、共通言語としては少し古いニュアンスを帯びています。


また、現在は機材のバリエーションも増えており、スライダーやジンバル、電動ドリーなどが普及したことで、「移動する装置」を一括りにするよりも、個別の機材名で指示した方が合理的になっている、という事情もあります。

執筆者・神野富三

名古屋の映像制作会社・株式会社SynApps代表取締役プロデューサー

シナリオ・演出・編集まで一貫して手がける映像プロデューサー・ディレクターとして40年にわたり映像制作に携わりながら

​ビジネス映像制作のノウハウを伝承する「名古屋映像設計研究所」を主宰

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