top of page

Lカット

Lカットとは、タイムライン上で前のシーンの音声を残したまま、映像だけを次のシーンへ切り替えるンリニア編集の時代になってから使われるようになった編集用語です。

Lカットとは

映像編集ソフトでは映像と音声を別々に編集できるため、前のシーンの音だけを後ろへ伸ばすことが容易できます。この時タイムライン上で映像と音声の境界がアルファベットの「L」のような形に見える(人もいるらしい)ことから、この名称が付けられたようです。


Lカットという名称はありませんでしたが、この技法自体はフィルム編集の時代から使われてきました。当時の日本の制作現場では、「音を残す」「音を引っ張る」といった表現が使われていたと思います。


Lカットは、映画やテレビ番組をはじめ、企業VP、ドキュメンタリー、インタビュー映像など、さまざまな映像作品で使用されています。例えば、インタビューの音声を流し続けながら関連する映像を見せたり、人物の最後の言葉を残したまま次の場面へ切り替えたり、前のシーンの音楽を次のシーンの冒頭まで残す編集がLカットです。



Lカットの効果


一般的には「場面転換を自然にする編集技法」と説明されますが、この説明だけでは、なぜLカットが効果的なのかまでは分かりません。


私たちは日常生活の中で、場所が変わった瞬間に意識まで切り替わることはありません。会議室を出ても、最後に交わした会話が頭の中に残ることがあります。電話を切ったあとも、相手の言葉を思い返しながら歩き続けることがあります。景色は変わっても、意識はしばらく前の出来事を引きずっています。


Lカットは、この日常の心理を映像編集で再現した技法と考えることができます。映像は次の場面へ進んでいても、音声は前の場面を語り続けます。その音は単なる音ではなく、視聴者の中では「直前まで見ていた場面の記憶」として働いています。


つまりLカットの本質は、単に音を残すことではなく、視聴者の記憶を次の場面へ持ち運び、新しい映像を、それまでの出来事と結び付けながら受け止めさせることにあります。



映像制作の現場から


JカットやLカット=プロらしい編集」という言説を散見しますが、これは技術の表面的な側面に過ぎません。

確かに画音同時カットに比べ、JカットやLカットは間の余白をダイナミックに圧縮できるため、短尺・高テンポが求められる現代の編集においてきわめて実践的です。しかし、それが単なる「手癖」になってしまえば本末転倒です。

編集における本質は、常に「演出意図」にあります。あえて画と音を同時に切り替えることで生まれる静寂や緊張感、構造の明確化など、ストレートカットでしか表現できない効果も数多く存在します。

執筆者・神野富三

名古屋の映像制作会社・株式会社SynApps代表取締役プロデューサー

シナリオ・演出・編集まで一貫して手がける映像プロデューサー・ディレクターとして40年にわたり映像制作に携わりながら

​ビジネス映像制作のノウハウを伝承する「名古屋映像設計研究所」を主宰

 執筆者ブログ

bottom of page