リファレンスとは
「参照」「参考」「基準」などを意味する英語です。映像や音楽などのデジタル制作では、 制作・生成・処理を行う際に参照する画像、映像、音声、テキスト、各種データなどを指して使われます。
リファレンス(reference)とは、「参照」「参考」「基準」などを意味する英語です。映像や音楽などのデジタル制作では、制作・生成・処理の際に参照する画像、映像、音声、テキスト、各種データなどを指します。
近年、映像制作に使うソフトウェアや生成AIなどで「Reference」「Reference Image」といった表記を目にする機会が増えています。特定のソフトや生成AIだけで使われる言葉ではなく、現在のデジタル制作環境を理解するうえで知っておきたい用語です。
リファレンスは「参照するもの」
リファレンスは「参照するもの」「基準として参照するもの」を指します。
例えば、ある画像の色調を基準に別の画像の色を調整する、CGを制作するときに実物の写真から形状や質感を読み取る、人物の画像を参照して同じ人物の別カットを生成する、といった使い方があります。
参照する対象は画像に限りません。映像、音声、テキスト、数値、各種データなども、そのソフトウェアやサービスが参照して処理や生成を行うのであれば、リファレンスとして扱われます。
映像制作で使われるリファレンス
映像制作では、構図、画角、カメラアングル、照明、色調、人物、衣装、美術、ロケーション、カメラワーク、編集のテンポ、CG表現などを検討する際に、類似の画像や映像を示し、「この写真のような光にしたい」「この映像のようなカメラワークにしたい」といった使い方をします。画像なら「リファレンス画像」、映像なら「リファレンス映像」「リファレンス動画」と呼ばれます。
ソフトウェアや機器では、処理や比較の基準を示す意味でもReferenceという言葉が使われます。色を合わせるための基準画像、CG制作で形状を確認するための画像、音声や映像信号を扱う際の基準値など、用途によって参照する対象は変わります。
生成AIとリファレンス
生成AIでは、生成するコンテンツの方向や内容を指定するために、さまざまな情報をリファレンスとして利用します。
画像・動画生成AIでは、人物、製品、建物、車、室内、構図、色調、スタイルなどを示す画像を参照させることができます。文章によるプロンプトだけで細かな外観や構図を説明するよりも、画像を与えることで具体的な視覚情報を伝えられます。
音楽生成AIでもリファレンスという考え方が使われます。例えばSunoでは、ジャンル、テンポ、楽器編成、ボーカル、曲調、構成など、生成する楽曲の仕様や方向性をテキストで指定します。こうした生成の基準として参照される情報もリファレンスです。サービスや機能によっては、音源そのものを参照して生成する方法もあります。
つまり、生成AIにおけるリファレンスとは「参考画像」のことではなく、AIが何かを生成するときに参照する情報や基準と捉えることができます。
リファレンスとプロンプト
生成AIでは、リファレンスとプロンプトが一緒に使われることがあります。
プロンプトは、生成AIに対して「何を、どのように生成するか」を文章などで指示するものです。その指示の中で参照する画像、音声、テキスト、データなどがリファレンスになります。
一方、サービスによってはプロンプトに記述した条件そのものを、生成の方向性を決めるリファレンスとして扱うこともあります。そのため、画面上で「Reference」と表示されたときには、「何を参照する機能なのか」を確認すると意味が分かります。
リファレンスと素材
リファレンスと素材は用途によって区別できます。例えば写真を編集ソフトに読み込み、完成映像の一部として使用すれば素材です。同じ写真を撮影スタッフに見せて「この構図と照明を参考にしよう」と使えばリファレンスになります。
生成AIでも同様です。製品画像を完成映像にそのまま合成するなら素材として使っています。その画像から製品の形状やデザインを読み取らせて新しい画像や映像を生成するなら、リファレンスとして使っています。
映像制作の現場から
映像制作業界では昔から、まだ存在しない完成映像のイメージをどう共有するかという問題がありました。企画書を書き、絵コンテを描き、写真や既存の映像を見せるのも、そのための方法です。
インターネットに現在ほど画像や映像が溢れていなかった時代には、頭の中にあるイメージに近い参考画像を探すこと自体が大変でした。雑誌や写真集を探したり、映画やテレビCMを思い出したり、過去に制作した映像を引っ張り出したりしても、ぴったりのものは滅多に見つかりません。
「ちょっと違うけど、まあ、こんな感じ」
という資料を見せ、足りない部分を言葉で説明していました。
インターネット上に大量の画像や映像が蓄積され、検索が容易になると、
「お、こんな感じ」
というものが見つかるようになりました。
そして生成AIでは、参考にする画像そのものを作ることができます。人物、背景、構図、カメラアングル、照明、時間帯などを指定し、違っていれば修正する。繰り返していくと、頭の中にあったイメージがかなり具体的な画として現れます。
「これだよ、これ!」
というところまで来たわけです。
映像制作におけるイメージ共有は、「近いものを探して説明する」段階から、「共有したいものそのものを作って見せる」段階へ進みつつあります。
「これだよ、これ!」を見せて仕事を取ったら
生成AIで作ったリファレンス画像は、企画提案でも強力な材料になります。従来の絵コンテより写実的で、構図、人物、ロケーション、照明、色調まで含めた完成イメージを制作前に提示できます。
そこで、その画像を見た発注者が「こういう映像ができる」と判断し、企画を採用したとします。
実際の撮影では、生成画像と同じ場所にカメラを設置できないことがあります。工場の設備は動かせません。照明を置くスペースにも制約があります。AIなら自由に整理できる背景も、実際のロケーションではそのまま存在します。
企画を提案した側がどこまで実現できるのかは、リファレンスを提示する段階で考えておく必要があります。「照明と色調を示すリファレンス」「構図まで含めたリファレンス」「完成映像全体のイメージ」といったように、その画像で何を示しているのかを発注者と共有しておけば、リファレンスが担う範囲も明確になります。
リファレンスの精度が高くなったことで、制作前の認識のズレを小さくできるようになりました。同時に、具体的な完成イメージを見せるほど、発注者の期待も具体的になります。
制作者にとっての、
「これだよ、これ!」
は、発注者に見せた瞬間、
「これだよね?」
になります。
これと寸分たりとも異なる映像を納品することができなくなります。
生成AIによってリファレンスを自由に作れるようになったことは、映像制作にとって大きな進歩です。そして、制作前にどこまで具体的な完成イメージを提示するのかという、新しい課題も生まれています。
最終更新日
2026年9月12日 18:29:49

