top of page

シャッター開角度

Shutter angleとも言い、フィルムカメラや一部のデジタルシネマカメラで使用されている、円盤状の回転式シャッターの切り欠き部分の角度のことです。切り欠きが開いている間だけ、フィルムやイメージセンサーに光が届き、露光が行われます。

シャッター開角度を解説するイメージ(監修・神野富三)

シャッター開角度と秒間コマ数(fps)で決まるシャッタースピード


フィルム映画は、秒間24コマで撮影することが一般的であるため、シャッター開角度を90度とすると、シャッタースピードは1/96秒となります。シャッター開角度180度では1/48秒です。


シャッター開角度90度の時のシャッタースピード

1/24×90°/360°=1/96秒


シャッター開角度180度の時のシャッタースピード

1/24×180°/360°=1/48秒



「シャッタースピードはfpsの2倍」


このシネマティックであることを至上とする動画クリエーターが好むルールは、フィルム映画時代のカメラのfpsが24コマ、シャッター開角度が180°前後だったことから導いた方程式です。この関係式がもたらす、パラパラ感と、露光時間がもたらすブラーの量が「シネマティックである」と考えているからです。

言い換えれば、フィルム製作による映像の質感の記憶が、現代社会にまだ残っていることによって成立している価値観です。デジタルカメラによるシネマティック表現がそれを再現しているとは言え、いずれ変質していくものだと推測できます。

映像制作会社としての視点


シャッター開角度(Shutter Angle)という用語が、ビジネス映像の現場で持ち出されることはめったにありません。数少ない機会があるとすれば「動体のブレ(モーションブラー)の質」を制御し、映像のリアリティや品位を守るための議論です。

静止画のシャッタースピードに相当する概念ですが、ビデオでは「フレームレート(fps)との連動」が重要になります。これが問題になる具体的な場面は以下の通りです。



1. フリッカー(照明のちらつき)への対策


オフィスや工場、展示会会場での撮影において、シャッター開角度が問題になる場合があります。


状況: LED照明や蛍光灯の電源周波数と、カメラのシャッター速度が干渉すると、画面に横縞が走ったり、全体が明滅する「フリッカー」が発生します。


判断: 日本の電源周波数(50Hz/60Hz)に合わせ、シャッター角度を「172.8°」や「144°」など、計算に基づいた特定の角度に微調整してフリッカーを消失させる必要があります。これを怠ると、編集時に使えるカットがないという大惨事を生みます。



2. 製造現場や製品の「質感」の表現


高速で回転するファン、精密機械の動作、あるいは滴る液体などを撮影する場合です。


状況: 標準的な180°の設定では、動きが滑らかすぎて「ブレ」が大きく、機械のキレや精巧さが伝わらないことがあります。


判断: シャッター開角度を狭く(例えば90°や45°)設定し、意図的にモーションブラーを減らすことで、「精悍さ」「スピード感」「精密さ」を強調します。逆に、伝統工芸のような手仕事の「柔らかさ」を伝えたい場合は、ブレを適度に残す標準的な設定が求められます。



3. グリーンバック(クロマキー)合成の精度向上


インタビュー動画などで背景を合成する場合、シャッター開角度は合成の品質に直結します。


状況: 180°の標準設定で人物が手を動かすと、手の輪郭が激しくブレます。この「半透明なブレ」の部分は、合成ソフトで背景と綺麗に分離することが困難です。


判断: 合成の精度(エッジのキレ)を優先する場合、あえてシャッター開角度を狭めて撮影し、切り抜きやすく加工しやすい素材を確保します。



4. 映像の「格(ルック)」の統一


インタビューとシネマティックなインサート(差し込み映像)を組み合わせる際、シャッター開角度がバラバラだと視聴者は違和感を覚えます。


状況: 多くの安価なカメラやスマホは、明るさを稼ぐためにシャッター角度を自動で広げてしまいます(スローシャッター状態)。


判断: 映画のような落ち着いたトーン(シネマティック)を目指す場合、「180°(シャッタースピードがフレームレートの2倍)」を死守することで、人間の目に最も自然に見える「残像感」を維持し、映像の品位を統一します。

執筆者・神野富三

名古屋の映像制作会社・株式会社SynApps代表取締役プロデューサー

シナリオ・演出・編集まで一貫して手がける映像プロデューサー・ディレクターとして40年にわたり映像制作に携わる

bottom of page