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Aロールとは

Aロール(A-roll)とは、現在の動画制作では、作品の中心となる映像、あるいは内容を直接伝える主要な映像素材を指す言葉として使われています。

Aロールを説明している画像

YouTubeなどの動画制作では、カメラに向かって話す出演者やインタビュー映像をAロールと呼び、その上に挿入する商品、風景、作業風景などの映像をBロールと呼ぶ人が増えてきました。一般的な用語で言い替えれば「インサート素材」です。


現在、動画クリエーターの多くは、たとえば、製品について担当者が説明する動画であれば、担当者が話している映像をAロール、説明に合わせて挿入される製品のアップや操作風景をBロールと呼びます。


ただし、Aロールという言葉は、もともと「作品の主役となる映像」という意味から生まれたものではありません。


ロールとは


Aロールの語源を辿る


Aロール、Bロールという呼称は、映像制作の技術的な作業工程の中で使われてきた言葉です。

フィルム制作では、プリントや光学処理などの都合から、素材をAロールとBロールという2系統に分けて扱う方法がありました。この場合のAとBは、映像内容の重要度を表すものではありません。


ビデオテープによる編集が普及した時代には、A/Bロールという言葉は、より分かりやすく編集機器の構成と結びつきます。

初期のビデオ編集では、再生VTR1台と録画VTR1台による編集が一般的でした。再生側のテープから必要な部分を送り出し、それを録画側のテープへ順番に記録していく方法です。

その後、再生VTRを2台使用する編集システムが普及します。

2台の再生VTRから出力される映像をスイッチャーで切り替えたり、重ねたりして、1台の録画VTRへ記録します。これがA/Bロール編集です。


ここでいうAロールとBロールは、二つの再生系統を識別するための呼称でした。

Aロールだから重要、Bロールだから補助という意味ではありません。

AとBは、映像の「身分」ではなく、作業上の「住所」だったのです。



現在のAロールは「喋り」が中心


現在、Aロールという言葉がよく登場するのは、YouTubeをはじめとする動画制作の世界です。

そして、その使われ方を見ると、現在の動画制作の特徴がよく表れています。


典型的なのは、出演者がカメラに向かって話す動画です。

まず話している映像を編集し、言い間違いや不要な間を取り除いて、話の流れを完成させます。この段階で動画の構成と尺はほぼ決まります。

その後、説明している商品、場所、操作画面、作業風景などの映像を挿入していきます。

この制作方法では、話者の映像が動画全体を支える軸になります。そのため、それを「Aロール」と呼ぶことには一定の合理性があります。


ただし、これは映像制作全般に通用する原理ではありません。

ドラマ、CM、ミュージックビデオ、映像そのものによって物語や意味を構成する作品などでは、何をAロールと呼ぶべきなのか明確でない場合もあります。

現在使われているAロールという言葉は、映像制作一般の基本概念というより、喋りを軸に構成する動画制作との親和性が非常に高い用語と考えたほうがよいでしょう。

映像制作の現場から


Aロールという言葉の変化


長く映像制作に携わっている人間にとって、現在のAロールという言葉には少し不思議なところがあります。

かつてAとBは、編集作業を成立させるために映像を二つの系統に分ける呼称でした。

ところが現在では、

「インタビューがAロールです」

というように、映像素材そのものの性格を表す言葉として使われています。

ここには、単なる用語の意味の変化以上のものがあるように思います。


映像を組み合わせることで意味を作るのではなく、まず「喋り」によって内容を成立させ、その内容を映像によって補強する。

YouTubeを中心に普及した動画制作では、この方法が極めて効率的です。

喋りを編集すれば、内容、順序、尺が決まります。あとは必要な映像を加えていけばよいからです。


Aロールという言葉が「主となる映像」という意味で広く使われるようになった背景には、こうした動画制作のスタイルそのものがあるのかもしれません。

映像制作の用語は、機材や技術だけでなく、その時代に何が作られているのかによっても意味を変えていきます。

Aロールは、その変化がよく見える言葉の一つです。

最終更新日

2026年8月7日 14:52:08

執筆者・神野富三

名古屋の映像制作会社・株式会社SynApps代表取締役プロデューサー

シナリオ・演出・編集まで一貫して手がける映像プロデューサー・ディレクターとして40年にわたり映像制作に携わりながら

​ビジネス映像制作のノウハウを伝承する「名古屋映像設計研究所」を主宰

 執筆者ブログ「映像制作ガイドブック」

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