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エレベーターショット

カメラ自体を垂直方向に上昇・下降させながら撮影するショットです。カメラの向きを上下に振る縦パン(チルト・ティルト)とは異なり、カメラの位置そのものが上下に移動して捉えるショットです。カメラワーク用語として広く認知されているわけではありません。

エレベーターショットのイメージ

撮影技法として体系化された用語というより、実際の撮影方法から自然に生まれ、スタッフ間で意味が通じていた現場的な呼称と考えるのがよいでしょう。「エレベーターカット」と呼ばれることもあります。

典型的なのは、シースルーエレベーターや建設現場の仮設エレベーターにカメラを持ち込み、レンズを外へ向けたまま昇降する撮影です。

カメラの高さが数十メートルにわたって変化するため、近くの建物や構造物が上下へ流れ、それまで見えなかった遠景が次第に現れるなど、通常の移動撮影とは異なるダイナミックな映像が得られます。


*SNSの投稿画像界隈には「エレベーターフォト」=エレベーターのカゴの中で上を見上げている様子を広角レンズで撮った写真?という言葉があるようです。



チルト、ペデスタル、クレーンとの違い


パンニングチルト)は、カメラの位置をほぼ固定したまま、カメラの向きを上下に振るカメラワークです。したがって、視点そのものが移動するエレベーターショットとは原理が異なります。

ペデスタル(Pedestal)もカメラ自体を上下させますが、通常はカメラ支持機材の昇降範囲内で行う比較的小さな高さの変更です。

また、クレーンやブームでもカメラを大きく上下させることができます。しかし、支点があるため、アームの運動によって前後・左右方向への移動も加わることが多く、純粋な垂直移動とは限りません。

エレベーターショットの特徴は、カメラの向きを大きく変えず、カメラ位置そのものを垂直方向へ大きく移動させることにあります。



映画の初期から行われていた撮影


映画史の初期には、列車や船などの「動く乗り物」にカメラを載せることで移動撮影が試みられました。エレベーターもその一つで、20世紀初頭にはすでにエレベーターから撮影された映像が存在します。

また、1940年代の映画論には descending elevator shot という表現が登場し、1967年の映画『卒業』の撮影についても、大型の昇降装置を使用した撮影が elevator shot と記録されています。

つまり、少なくとも英語圏には elevator shot という表現がありました。

映像制作の現場から


シースルーエレベーターに乗って外を眺めれば、「ここから撮ったら面白い画になる」と誰でも思いつきます。そして実際に撮ってみると、これが面白い。

筆者が住む名古屋なら、駅周辺にJRセントラルタワーズとミッドランドスクエアにシースルーエレベーターがあり、どちらからもエレベーターショットを撮影できます。

しかも、この二つの高層ビルは向かい合っています。

こちらのエレベーターで上昇しながら、向かいのビルのエレベーターが下降してくるタイミングを狙う。あるいは同じ方向へ上昇するエレベーターを追いながら、こちらも上昇する。カメラ自体の垂直移動に、被写体となるエレベーターの垂直移動が加わり、速度や位置関係によって画面の見え方が大きく変化します。

もちろん、その背景では名古屋の街並みも刻々と高さを変えて見えてきます。


特別な撮影技術が必要なわけではありません。カメラを持ってエレベーターに乗ればできる。それでも、どの方向を狙うか、いつ上昇を始めるか、向こうのエレベーターとどう動きを絡ませるかによって、かなり遊べるカメラワークです。

*エレベーターショットの撮影は、その建物や工事現場の責任者に許可をとって行ってください。

最終更新日

2026年8月29日 16:46:39

執筆者・神野富三

名古屋の映像制作会社・株式会社SynApps代表取締役プロデューサー

シナリオ・演出・編集まで一貫して手がける映像プロデューサー・ディレクターとして40年にわたり映像制作に携わりながら

​ビジネス映像制作のノウハウを伝承する「名古屋映像設計研究所」を主宰

 執筆者ブログ「映像制作ガイドブック」

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