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香盤表(コウバンヒョウ)

撮影スケジュールを詳細に記載した表で、いわば撮影の進行台本のようなものです。どのシーンをいつ、どこで、どのように撮影するか、出演者、必要なスタッフ、機材、小道具、衣装などが一目でわかるマトリックス状の一覧表です。

香盤表(コウバンヒョウ)を解説するイメージ(監修・神野富三)

撮影スケジュールを共有し、各スタッフが自分の役割を把握することで、各々が先回りをした準備を行い、撮影をスムーズに進めることができます。



香盤表は誰がつくる?


劇映画、ドラマ番組などの場合は、助監督AD)が中心


出演者がある劇映画、ドラマの撮影では、衣装、小道具や美術セットなどの段取りは演出に関わる要素が強いため、香盤表は監督の意を汲んだ助監督が、プロデューサー制作進行らと相談しながら作成されます。


企業PR映像制作では(PM・プロダクションマネージャー)がつくります


企業PR映像制作では、クライアントとの調整要素も多く、制作スケジュールの管理、出演者、ロケ場所、機材やスタッフを手配するのは制作進行の役割です。プロデューサーの意向を汲みながら、演出部(ディレクターAD)の意向を踏まえ、ロケ先との調整を行い、香盤表を作成するのは制作進行の仕事です。



香盤表の出来不出来が撮影現場でけでなく映像の完成形に影響します


どのカットをどの順序で撮るかは、出演者のコンディションや現場の士気に直結します。物語の流れ通りに進める「順撮り」ができることは稀であり、実際の香盤表には「限られた時間の中で何を優先するか」という判断が凝縮されます。


例えば、同じロケーションのカットをまとめて効率を優先するのか、あるいは出演者の緊張の維持に配慮するのか。機材のセッティング替えを最小限に抑えつつ、衣装・メイクの時間、移動のタイミング、さらには陽の高さまでを計算し、最も淀みなく進む順序を組み立てる必要があります。


技術的な側面では、香盤順のミスは「絵がつながらない」という致命的な事態を招きかねません。陽の連続性、小道具の状態、あるいは演者の感情の起伏。これらを論理的に繋ぎ合わせる計算が香盤表には求められます。


ここで無理が生じると、現場から「余裕」が失われます。時間に追われる状況では、本来追求できたはずの演出上の選択肢が狭まり、結果としてカットの精度にまで影響を及ぼしてしまいます。香盤表とは、単なるスケジュール表ではなく、映像の質を担保するための「撮影現場の設計図」です。




香盤表に記載される主な項目


  • シーン番号: 各シーンに番号を振り、どのシーンを撮影するかを明確にします。

  • シーン名: シーンの内容を簡潔に表す名称です。

  • 撮影日: 各シーンの撮影日を記載します。

  • 撮影場所: 室内か屋外か、具体的な場所を記載します。

  • 撮影時間: 撮影開始時間と終了時間を記載します。

  • 出演者: そのシーンに出演する俳優の名前を記載します。

  • スタッフ: カメラマン、照明スタッフ、音声スタッフなど、必要なスタッフを記載します。

  • 小道具: そのシーンで使用する小道具を記載します。

  • 衣装: 出演者が着用する衣装を記載します。

  • その他: 特殊効果、セット、天候など、必要な情報を記載します。



香盤の由来


お寺の仏前でお香を焚く、真鍮や銅などの金属で作られた台のこと香盤と言い、マス目に仕切られているその様子が、映画撮影のスケジュールを時間軸と職名・仕事で仕切って書き込んだマス目の様子と似ていることから「香盤表」という呼び方が生まれたとする説、歌舞伎の楽屋で香盤(お香を焚いて時を計る道具)を使って時間を計っていたこと(→スケジュール管理)に由来するという説があります。

映像制作の現場から


VP撮影における香盤表とは


企業から依頼を受けて制作するVP(ビデオパッケージ)の撮影において、香盤表の作成は、制作会社だけで完結する作業ではありません。基本的には、クライアント側の担当者と制作側がすり合わせながら進める共同作業になります。



クライアント側にしか分からない情報


VPの撮影では、出演者が自社の社員であるケースが多く、撮影場所も実際のオフィスや工場、店舗など、通常業務が動いている現場で行われます。そのため、「誰が」「いつ」「どこで」「どのカットに出演できるのか」といった情報は、制作会社だけでは正確に把握できません。担当者のスケジュール、会議や業務の都合、現場の稼働状況、立ち入り可能な時間帯などは、クライアント側でなければ判断できない要素です。



制作会社が担う段取り設計


一方で、撮影の流れや段取り、機材搬入のタイミング、スタッフ配置、カットの優先順位などは、制作側の専門領域です。限られた撮影時間の中で、どのカットをどの順番で撮るべきか、天候やトラブルが発生した場合にどこを入れ替えるかといった設計は、現場を熟知している制作会社が主導して組み立てます。



香盤表は「共同設計図」


つまり香盤表は、「制作側の段取り」と「クライアント側の事情」が交差する調整表です。どちらか一方だけで作るものではなく、双方の情報を持ち寄って現実的なスケジュールに落とし込む必要があります。香盤表のすり合わせが不十分なまま撮影当日を迎えると、出演者が不在だったり、使用できない場所が含まれていたりといったトラブルが起きやすくなります。



香盤表作成が撮影の成否を左右する


VP撮影における香盤表の作成は、単なる進行表の作成ではなく、クライアントと制作会社が「当日の現場をどう成立させるか」を具体化するための共同作業です。ここが丁寧に詰められているほど、当日の撮影はスムーズに進み、現場のストレスや想定外の手戻りも減っていきます。

執筆者・神野富三

名古屋の映像制作会社・株式会社SynApps代表取締役プロデューサー

シナリオ・演出・編集まで一貫して手がける映像プロデューサー・ディレクターとして40年にわたり映像制作に携わりながら

​ビジネス映像制作のノウハウを伝承する「名古屋映像設計研究所」を主宰

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