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リニア編集とは

映像や音声が記録されたテープなどの媒体を再生し、その信号を別の記録媒体へ記録することで映像を編集する方式です。ビデオテープを使った編集が代表的で、ノンリニア編集が普及する以前、テレビ番組や企業映像など幅広い映像制作で用いられていました。

リニア編集のイメージ

リニア(linear)には「線状の」「直線的な」という意味があります。

ビデオテープでは、映像がテープ上の時間軸に沿って連続して記録されています。目的の映像へ移動するにはテープを早送り・巻き戻ししてその位置まで走行させる必要があり、このような記録媒体の性質から、任意の素材へ直接アクセスできるノンリニア編集と区別して「リニア編集」と呼ばれます。



PLAYERとRECORDER


典型的なリニア編集システムは、素材テープを再生するPLAYER VTRと、編集結果を記録するRECORDER VTR、それらを制御する編集コントローラーなどで構成されます。

編集者はPLAYER側で素材を探し、使用する範囲を指定します。そしてRECORDER側の記録位置を指定して編集を実行します。編集コントローラーはPLAYERとRECORDERを制御し、編集点より前からVTRを走行させるプリロールを行い、双方を同期させたうえで、指定された編集点から正確に記録を開始します。複数のPLAYER VTR、映像スイッチャー、DVE(Digital Video Effects)、文字発生器、音声機器などを組み合わせた編集システムもありました。



IN点/OUT点と3点編集


リニア編集では、ソース側とレコード側にそれぞれIN点とOUT点があります。


SOURCE IN / SOURCE OUT
RECORD IN / RECORD OUT


SOURCE IN/OUTは素材の使用範囲、RECORD IN/OUTは完成テープ上の記録範囲を示します。

通常速度で編集する場合、ソース側で10秒間を指定すれば、レコード側にも10秒間記録されます。そのため4つの位置のうち3点を指定すれば、残る1点は自動的に決まります。これが3点編集です。編集点はタイムコードによってフレーム単位で管理され、編集コントローラーに登録して編集を実行します。



アッセンブル編集とインサート編集


リニア編集には、代表的な記録方法としてアッセンブル編集(Assemble Edit)インサート編集(Insert Edit)があります。

アッセンブル編集は、映像、音声、CTL(コントロール信号)などを新たに記録しながら、テープ上に編集結果を連続して作っていく方法です。

インサート編集は、あらかじめ連続した信号が記録されたテープの指定区間へ、映像や音声を差し替える方法です。映像だけ、特定の音声トラックだけといった選択的な編集も可能でした。

インサート編集では既存のCTLなどの連続性を維持するため、RECORDER側のテープにあらかじめ安定した連続信号が記録されていることが必要でした。



タイムコードとコントロール信号


リニア編集では、VTRを正確に制御するためにタイムコードやCTLなどの信号が重要な役割を持ちます。タイムコードは、

01:23:45:12

のようにテープ上の位置をフレーム単位で識別するための情報です。編集コントローラーはこれを利用してIN点/OUT点を管理し、PLAYERとRECORDERを指定位置へ移動させます。CTLはVTRのテープ走行やサーボ制御の基準となる信号で、安定した編集を行うためにはその連続性が重要でした。



編集と世代


アナログビデオでは、映像を別のテープへコピーするたびに画質・音質が劣化します。そのため、本編集では撮影オリジナルから直接編集して、できるだけ第1世代の完成マスターを作ることが重視されました。

編集内容を検討する段階では、低コストな媒体へコピーした素材を使ってオフライン編集を行い、編集内容が決定してから撮影オリジナルを使ってオンライン編集を行う、といったワークフローも広く用いられました。



ノンリニア編集との違い


ノンリニア編集では、映像をデジタルデータとして扱い、ストレージ上の任意の素材、任意の位置へ直接アクセスできます。これに対してリニア編集では、テープ上の目的位置まで媒体を走行させ、そこから映像・音声信号を再生して別の媒体へ記録します。つまり、時間軸に沿って記録された媒体を走行させながら素材へアクセスし、再生された信号を別の記録媒体へ記録して編集する方式がリニア編集です。

映像制作の現場から


リニア編集室では、エディターの前に編集コントローラー、複数のVTR、スイッチャー、音声卓、各種モニターなどが並び、編集を実行する前に現在の設定を目視で確認することが重要でした。

特にインサート編集では、

「VIDEO、入ってる」
「A1、A2は?」
「ASSEMBLEじゃない」
「IN、OUT……」

という具合に、パネルの点灯状態や設定を指で追いながら確認する。まさに航空機のコックピットでチェックリストを確認するような感覚です。


理由は単純で、操作を間違えたとき、Undoがなかったからです。

間違った音声トラックを選択していれば、すでに完成している音声を消してしまう。VIDEOを選択していれば映像を書き換える。さらにASSEMBLEの選択を誤れば、単なる映像・音声の間違いでは済まないこともある。

ですから「指差確認」は大げさな儀式ではなく、完成テープそのものへ直接書き込むリニア編集における事故防止の動作だったわけです。

最終更新日

2026年8月20日 11:30:16

執筆者・神野富三

名古屋の映像制作会社・株式会社SynApps代表取締役プロデューサー

シナリオ・演出・編集まで一貫して手がける映像プロデューサー・ディレクターとして40年にわたり映像制作に携わりながら

​ビジネス映像制作のノウハウを伝承する「名古屋映像設計研究所」を主宰

 執筆者ブログ「映像制作ガイドブック」

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