.mp3(エムピースリー)
MPEG Audio Layer-3という規格で圧縮された音声ファイルを表す拡張子です。汎用性が高く、多くのデバイス(スマートフォン、音楽プレーヤー、パソコンなど)やソフトウェアで再生可能です。
MPEG Audio Layer-3は、人間の聴覚心理に基づいて、聞こえにくいとされる音域や音の情報を削除(非可逆圧縮)することで、元のデータ容量を大幅に圧縮します。
一般的に、WAVファイルの約1/10程度のサイズになります。
ただし、圧縮の際に情報が失われるため、元の音質からは劣化します。適切なビットレートでエンコードされていれば、多くの人にとって音質の劣化は気にならない程度です。
映像制作会社としての視点
プロの映像制作、特に編集やMAの現場での、音声データの扱いは「非圧縮・高解像度」が鉄則です。コンシューマー向けの動画ではAACやMP3などの「圧縮音声」が一般的ですが、制作現場ではこれらは基本的に避けられます。
1. 標準的なコーデックとファイル形式
プロの現場で扱われる音声は、ほぼ例外なく以下の非圧縮形式です。
LPCM:圧縮を一切行わない、音の波形をそのままデジタル化した形式です。
WAV / BWF:最も一般的なファイル形式です。特にBWF(Broadcast Wave Format)は、ファイル内にタイムコードの開始情報や収録条件などのメタデータを埋め込めるため、映像との正確な同期が求められる現場では事実上の標準規格になっています。
AIFF:Apple環境で使われる非圧縮形式
2. サンプリング周波数と量子化ビット数
単にWAVであれば良いわけではなく、以下のスペックが「プロの最低ライン」とされています。
48kHz / 24bit:テレビ、Web動画、VP(ビデオパッケージ)などの業界標準です。
96kHz / 24bit以上:効果音収録やハイレゾ配信用素材、ピッチ変更・タイムストレッチなど強い加工を前提とした素材で使われることが多いです。
※映画の本編ポスプロは実務上 48kHz / 24bit が標準です。
3. 納品時の例外
ただし、最終的な「納品」の段階では、指定のコーデックに変換することがあります。
MXF(XDCAMなど): 放送・業務用では、映像ファイル内にLPCM(非圧縮音声)として格納される構成が一般的です。
※運用によっては圧縮音声が使われるケースもあります。MP4(Web用): 最終出力時にのみ、視聴環境に合わせてAAC(320kbps等)に変換。
現場の「こぼれ話」
撮影現場で別録りされた音声(ガンマイクやピンマイク)が、もし「MP3」で届いたら、MAエンジニアは「同期は大丈夫か?」「音質は耐えられるか?」とかなり身構えます。たとえ現場の録音機がBWF対応であっても、設定ミスで16bitになっていたりすると、その後の整音作業(ノイズ除去など)の限界値が決まってしまうからです。

