スローモーション
現実の動きを実際よりもゆっくり再現する映像表現です。
スローモーションを実現するためには、大きく分けると、撮影時に多くのコマを記録する方法と、撮影後に時間を引き伸ばす方法があります。
本来のスローモーション ― ハイスピード撮影
映画・映像技術で古くからいうスローモーションは、通常より高いフレームレートで撮影し、それを通常速度で再生する方法です。
例えば、完成映像が30fpsの場合、
30fpsで撮影 → 30fps再生 = 通常速度
60fpsで撮影 → 30fps再生 = 1/2速度
120fpsで撮影 → 30fps再生 = 1/4速度
240fpsで撮影 → 30fps再生 = 1/8速度
となります。
つまり120fps撮影では、現実の1秒間に120枚の画像を記録しています。それを毎秒30枚ずつ再生すると、記録した1秒分を4秒かけて見ることになります。
これが最も基本的な原理です。
映画フィルムの時代には、通常24コマ/秒で上映するところを、カメラ側だけ48コマ、96コマなどで回しました。このため英語では overcranking(オーバークランキング) と呼ばれることがあります。昔の映画カメラのクランクを通常より速く回したことに由来します。
ハイスピード撮影の特徴
この方法では、各瞬間を実際に撮影しているため、動きが滑らかです。例えば水滴が落ちて跳ねる場面を240fpsで撮影すれば、その途中の形状もすべて実写として存在します。
スポーツ中継、製品試験、衝突実験、液体、爆発、人物の髪や衣服の動きなどでハイスピード撮影が使われるのは、このためです。
ただしフレームレートを上げるほど、1フレーム当たりに露光できる時間が短くなります。
例えば180度シャッター相当なら、
30fps → 約1/60秒
120fps → 約1/240秒
240fps → 約1/480秒
となります。
したがって、スローモーション撮影には通常撮影以上の光量が必要になることがあります。超高速撮影になると非常に強力な照明が必要になるのはこのためです。
撮影後に速度を落とす方法
一方、30fpsで撮った映像を編集ソフトで50%や25%にすることもできます。
ただし単純に再生速度を落とすだけでは、存在しないフレームは増えません。
30fpsの素材を1/4速度にすると、本来なら120fps分の画像が必要です。そこで編集ソフトではいくつかの処理方法があります。
フレームリピート
同じフレームを何回か繰り返します。
たとえば、
A → B → C
という映像を4倍に伸ばせば、
A A A A → B B B B → C C C C
のようになります。
当然、動きはカクカクします。
フレームブレンディング
前後のフレームを重ね合わせて中間を作ります。
A → A+B → B → B+C → C
という考え方です。
動きは多少滑らかになりますが、動いている物体に残像が出ます。
フレーム補間
現在一般的なのはこちらです。
前後の画像から物体がどう移動したかを解析し、その間に存在したであろう画像を生成します。Premiere Proなどでいうオプティカルフロー(Optical Flow)が代表例です。
例えば、
A ───────── B
という2フレームの間に、
A → A' → A'' → A''' → B
という中間フレームを計算によって作ります。
これは撮影した画像ではなく、コンピュータが推定した画像です。
AIによるスローモーション
現在はさらに、ディープラーニングを使ったフレーム補間があります。
人物の手足、髪、水、煙などの動きを解析し、中間フレームそのものを生成します。
そのため、かつてならハイスピードカメラで撮影しなければ成立しなかったような滑らかなスローを、通常フレームレートの素材から作れる場合もあります。
ただし原理的な違いは重要です。
ハイスピード撮影
→ 実際に起きた瞬間を記録している
オプティカルフロー/AI補間
→ 起きたであろう瞬間を推定して作っている
という違いがあります。
高速回転するもの、物体同士が交差する場面、細かい水しぶき、炎、激しく変形する物体などでは、補間映像に破綻が生じることがあります。
映像制作の現場から
現在は通常撮影そのものが高フレームレート化している
以前は、編集でスローモーションにすることがあらかじめ分かっているショットだけ、通常より高いフレームレートに切り替えて撮影するのが一般的でした。
例えば通常30pで制作する映像であれば、スローにする場面だけ60pや120pで撮影します。
現在では、カメラや記録メディアの性能向上によって、通常の撮影そのものを60pで行うケースも増えています。スマホのカメラでさえ60pでの撮影が可能です。
30pで仕上げる映像であれば、60pで撮影した素材はそのまま50%の速度まで滑らかにスロー再生できます。
このため現在では、「スローモーション用に特別にハイスピード撮影する」という考え方だけでなく、普段から比較的高いフレームレートで撮影し、編集時に通常速度とスローを使い分ける制作方法も一般的になっています。
最終更新日
2026年10月16日 16:43:45
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