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デジとは

標準的な放送用ENGカメラに対して、業務用・民生用の小型デジタルビデオカメラを指して使われる俗称です。

デジ撮影の画像

「デジタルビデオカメラ」を縮めた言葉ですが、デジタル方式のカメラ全般を意味するわけではありません。ENGカメラもデジタル方式であるため、「デジタルか、そうでないか」という技術方式による分類ではありません。

「ENGで撮る」「ここはデジでいい」「ENG1台、デジ2台」といったように、カメラの種類や運用を区別する現場語として使われています。



「デジ」が広がった背景


小型のデジタルビデオカメラは、DVやDVCAMなどのデジタルテープを記録媒体としていた時代にも、放送や業務映像の制作に使われていました。ただし当時、小型カメラを仕事で使うことには、ある種の先駆的な意味合いがありました。ENGカメラとの画質や操作性の違いを理解したうえで、機動性や撮影条件などを優先し、あえて小型カメラを選択するという使われ方です。


その後、記録媒体がテープからメモリーカードへ移行する時期と重なるように、映像のHD・FHD化、さらに4K化が進みました。小型・低価格のカメラでも高解像度の映像を撮影できるようになり、ENGカメラでなければ難しかった撮影の一部を、小型カメラでも担えるようになります。


同時に、テープからの実時間取り込みを必要としないファイルベースの制作環境が一般化し、カメラの小型化・低価格化も進みました。つまり、記録媒体の変化だけではなく、高解像度化、ファイルベース化、小型化、低価格化がほぼ同時に進んだことで、小型カメラを使う場面と使い手が急速に広がったのです。

こうした変化の中で、ENGカメラとは異なる小型の業務用・民生用カメラをひとまとめにして「デジ」と呼ぶ言い方が、一部の映像制作現場で定着していったと考えられます。



「デジ」には少し侮蔑的な意味もある


特に放送制作に関わる人が使う場合には、「標準的な放送用ENGカメラではない、小型で安価なカメラ」という意味から、多少の揶揄や侮蔑を含んで使われることがあります。これは必ずしもカメラの性能だけを評したものではありません。

小型・低価格のカメラが普及したことで映像制作への参入が容易になり、撮影する人の裾野も大きく広がりました。そのため「デジ」という言葉が、機材だけでなく、その機材を中心に仕事をする撮影者や制作環境まで含めて語られる場合があります。

もちろん、すべての「デジ」という言い方にこうした意味があるわけではなく、単にENGカメラと小型カメラを区別するために使われる場合もあります。

映像制作の現場から


ENGカメラが「デカカメ」になった


「デジ」という分類が広がったことで、以前「デカカメ」といえば、小型のENGカメラとの比較で、スタジオに据え置かれた大型のテレビカメラを指す言葉でした。

ところが、小型カメラを「デジ」と呼ぶようになると、今度はデジとの対比から、それまで標準的な大きさだったENGカメラを「デカカメ」と呼ぶ人が増えてきました。


かつては、

スタジオカメラ(デカカメ) ↔ ENGカメラ

だったものに、

ENGカメラ(デカカメ) ↔ デジ

という新しい関係が加わったわけです。


一方、本来「デカカメ」と呼ばれていたスタジオカメラの本体は、むしろ以前より小型化しています。ただし、大型レンズやビューファインダー、雲台、ペデスタル、ズームやフォーカスなどの操作装置は、単純な小型化ではなく、操作性や性能を高める方向で発達しています。

「デカカメ」という言葉が指す対象まで変化したことは、「デジ」が単なるカメラの略称ではなく、現場に新しい機材カテゴリーをつくったことをよく表しています。


現在では、カメラの大きさ、価格、性能の関係は以前ほど単純ではありません。小型カメラやミラーレスカメラ、シネマカメラが放送番組やCMなどに使われることも珍しくなく、機材の大きさだけで映像の品質や用途を判断することはできません。


そもそも「ENG」「デジ」「デカカメ」という区分は、メーカーが定めた製品分類ではありません。「デジ」は、放送用ENGカメラを長く標準としてきた映像制作の世界に、小型で高画質なカメラが大量に入り込んだことで生まれた現場独自の分類です。

最終更新日

2026年9月6日 14:06:25

執筆者・神野富三

名古屋の映像制作会社・株式会社SynApps代表取締役プロデューサー

シナリオ・演出・編集まで一貫して手がける映像プロデューサー・ディレクターとして40年にわたり映像制作に携わりながら

​ビジネス映像制作のノウハウを伝承する「名古屋映像設計研究所」を主宰

 執筆者ブログ「映像制作ガイドブック」

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