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トラッキング

トラッキング(Tracking)とは、映像内の人物・物体・特徴点、あるいはカメラそのものの動きを継続して追跡する技術です。

トラッキングを説明している画像

現在の映像制作では、実写映像にCGや文字、画像などを合成するときに使われることが多く、対象の位置・向き・大きさの変化をフレームごとに解析し、その動きに別の要素を追従させます。

たとえば、走っている自動車のナンバープレートにぼかしを追従させる、人物の顔にグラフィックを重ねる、動いている看板の面に別の映像を合成するといった処理がトラッキングです。

対象によって、モーショントラッキング、オブジェクトトラッキング、カメラトラッキングなどに分けて呼ばれます。

また、「トラック」「トラッキング」という言葉が、カメラ自体を移動させながら被写体を撮影する意味で使われることもあります。この場合は、画像解析の技術ではなく、撮影方法を指しています。



映像制作で使われる主なトラッキング


1. モーショントラッキング

映像内の特定の点や領域の動きを追跡する方法です。

被写体の位置を追い続け、その座標情報を文字、画像、CG、マスクなどに反映させます。

映画やCM、企業映像などのVFX制作で広く使われています。

代表的な用途には、

  • 人物の顔にモザイクやぼかしを追従させる

  • 動く被写体の横にテロップを表示する

  • 商品や建物の特定部分にグラフィックを追従させる

  • 実写映像にCGを合成する

などがあります。



2. オブジェクトトラッキング

人物、自動車、ボールなど、映像内の特定の物体そのものを認識し、その動きを追跡する技術です。

単一の特徴点を追う方法よりも、対象物全体の形状や特徴を利用して追跡します。

映像制作のほか、スポーツ解析、防犯カメラ、自動運転、画像認識など幅広い分野で使われています。

近年はAIによる物体認識と組み合わせることで、人物や車両などを自動的に識別して追跡する技術も一般化しています。



3. カメラトラッキング

カメラトラッキングとは、撮影された映像から、撮影時のカメラの位置や向き、移動を解析する技術です。

カメラがパン、チルト、移動、回転などをしている映像から、その動きを三次元的に推定します。

解析したカメラの動きを3DCGソフト側の仮想カメラに反映させることで、実写とCGの動きを一致させることができます。

たとえば、手持ちカメラで撮影した街並みにCGの建物を追加する場合、実写カメラの揺れや移動にCGも正確に追従させなければ、合成映像として成立しません。そのためにカメラトラッキングが使われます。

「3Dカメラトラッキング」「マッチムーブ」と呼ばれることもあります。



4. 平面トラッキング

壁、看板、スマートフォンの画面、机の天板など、平面的な領域を追跡する方法です。

対象となる面の移動だけでなく、回転、拡大縮小、遠近による形状変化なども解析できます。

動いている看板の広告を差し替えたり、スマートフォンの画面に別の映像を合成したりする場合によく使われます。



トラッキングで取得する情報


トラッキングでは、対象によって次のような変化を解析します。

  • 水平方向・垂直方向の位置

  • 移動量

  • 回転

  • 拡大・縮小

  • 遠近による変形

  • カメラの位置

  • カメラの向き

  • 三次元空間上の動き

必要な情報によって、使用するトラッキング方法も変わります。



トラッキングしやすい映像


トラッキングの精度は元映像の状態に大きく左右されます。

輪郭や模様がはっきりしている場所は追跡しやすく、コントラストの低い壁や空、反射面、水面などは追跡しにくい傾向があります。

また、

  • 強いモーションブラー

  • 急激なカメラ移動

  • 被写体が他の物体に隠れる

  • ピントが大きく外れる

  • 被写体の形が大きく変化する

  • 激しい照明変化

などがあると追跡が外れることがあります。

VFXを前提とした撮影では、後工程でトラッキングしやすいよう、マーカーを設置することもあります。

映像制作の現場から


Adobe After Effects、DaVinci Resolve、Nukeなどの映像制作ソフトには、さまざまなトラッキング機能があります。

以前は追跡するポイントを指定し、外れたフレームを人間が修正する作業が多く必要でした。現在では画像認識やAIを利用した自動追跡が進み、人物や物体を指定するだけで長い区間を追跡できる場合もあります。

トラッキングによって、従来は一コマずつ位置を合わせていた合成やマスク処理を、自動化または大幅に省力化できます。



「トラック」という撮影用語


撮影現場で使われる「トラック」は、別の意味を持つことがあります。

カメラを前後左右に移動させながら撮影することを「トラック」「トラッキングショット」などと呼びます。

人物と並走したり、歩く人物を横から追ったりする撮影が代表例です。

この場合のトラッキングは、映像内の対象をソフトウェアで解析する技術ではなく、カメラそのものを移動させて被写体を追う撮影方法を指します。



アイトラッキング、ヘッドトラッキングなど


「トラッキング」という言葉は映像制作以外の分野でも広く使われます。


アイトラッキング
人間の視線や眼球の動きを追跡します。広告やWEBサイトの視認性調査などに使われます。


ヘッドトラッキング
頭部の位置や向きを検出します。VRなどで、利用者の頭の動きに合わせて映像を変化させます。


ハンドトラッキング
手や指の位置、形、動きを認識します。VR、AR、ゲーム、各種インターフェースなどで利用されています。



「トラッキング」とアナログビデオ


アナログビデオの時代にも「トラッキング」という言葉が使われていましたが、現在のモーショントラッキングとは意味が異なります。

VHSなどの磁気テープ方式では、回転ヘッドがテープ上に記録された映像信号のトラックを正確になぞる必要がありました。

ヘッドと記録トラックの位置がずれると、画面にノイズが出たり、映像の一部が乱れたりします。このずれを調整する操作が「トラッキング調整」です。

家庭用VHSデッキに「TRACKING」という調整機能が付いていたのはこのためです。


現在の映像制作で単に「トラッキング」と言った場合は、通常、映像内の対象やカメラの動きを解析して追跡する技術を指します。

最終更新日

2026年10月16日 16:43:45

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